スイス・ショックがもたらしたもの・相場観とは?相場観1月第5週
マーケットは依然スイス・ショックの余韻を引きずった状態ですが、その後はドル円を始め各通貨ペアとも落ち着きを取り戻した値動きとなっています。
しかしながら、ユーロのように渦中の真っ只中にある通貨は今月の前半に比べて大きく値を下げたままです。
ギリシャを始めとしたユーロ圏各国の動向からも、今後更にユーロが安値を更新する可能性は高く、トレードも慎重さが必要な場面です。
この記事ではFXトレードに対する相場観を一週間単位で振り返る内容を中心にしていましたが、確かにFXのリアルタイムの値動きというものは日々の経済情勢を背景にしています。
そのため、トレードに対する相場観というと、「毎日の指標発表や日経平均、ダウなどの動きを始めとしたファンダメンタル要素を押さえておくこと」と思っておられる人もいるかもしれません。
もちろん、それら日々の値動きの直接的要因となる要素は重要ですが、それ以外にも相場観を身に付けるために押さえておくべき要素は非常に多いのです。
今回のスイス・ショックに関しては日本国内よりも欧州を中心とした海外勢の方がスイス・フランの取引量が圧倒的に多いため、金融機関及びFX会社、ファンド、個人トレーダーに至るまで、実際にどれだけの影響があったかというニュースは先週から徐々に伝わってきています。
前回の記事に書いたような即時破綻となってしまったFX会社を始め、金融機関や個人トレーダーが抱えた損失は膨大な金額となっています。
確かにスイス国立銀行が行った対ユーロでの上限撤廃は突然すぎる動きでした。
その前に起こったルーブル暴落や中国の人民元などと比較しても、世界中のマーケットで日常的に取引される通貨ペアとしての立ち位置から考えると、対ユーロでの上限撤廃を実施することによってマーケットに混乱をもたらすことは当事者なら容易に想定していたはずです。
スイス国際銀行始めスイス政府の真意はともかくとして、今回のスイス・ショックを引き起こした背景から改めて「相場観」というものを考えてみましょう。
元々スイス・フランは日本の円と同様、マーケットにおいては「安全資産」という立ち位置が明確であり、その為に欧米各国で何らかの動きがあれば、そのリスク回避先として即時買われる通貨でした。
そのためスイスは自国通貨高に悩まされており、その対策として2011年9月に対ユーロでの上限値を決め、その価格(1.2000フラン)を維持するために無制限の介入をするようになったのです。
この事実だけを捉え、「フランは対ユーロで常に安定している、引いては他の通貨に対してもフランの安定性は高い」と見做したトレーダーが、スワップ金利狙いなど低リスクの投資先としてフランに投資したのは当然の動きです。
しかしながら、昨今のユーロ圏の国々の経済状況や政情を考えると、スイスが対ユーロで1.2000フランを維持するためには自国通貨を発行し続けなければなりません。
理論上は可能なこの手法ですが、自国通貨を刷り続ければ自国通貨の資産は増えます。
ですが、「その資産の中でユーロ建ての部分が大きく膨らむ」ことになる半面、「ユーロ建ての資産の価値は下がり続ける」ことになります。
例えば「日本の家庭で円とドルの両方に資産を分けた場合、普段使用する円の価値は少々上下しても仕方が無いと思う反面、ドルの価値が大きく下がった場合、資産の総額は目減りして不安が大きくなる」と考えれば解り易いでしょう。
その背景を把握していれば、「ユーロの価値が下がり続けている今、いつまでもフランは安定しない筈だ」という見方も出来るでしょう。
この考え方こそ「相場観」の大元であると考えます。
為替の原点は・・・
為替の原点は、「通貨の価値は、その通貨を発行する国家(及び集合体など)の信頼性」にあります。
つまり、国家が破綻してしまえば、その通貨の価値は無くなります。その良い例がビットコインという仮想通貨でしょう。
しかし、世界中のマーケットに対ユーロでの上限を「公言」していた安心感は、その危機管理意識を鈍らせる程であったとも言えます。
今回の件で日本国内でも個人・法人併せて総額30億円以上の損失が発生したとも言われています。
取引をするFX会社を選ぶことやロスカットの設定はトレードにおいて重要ですが、加えて「取引をする為に安定度(安心度?)の高い通貨」を選ぶことも、市場から退場しない為には最重要となる部分です。
値動きだけを追うのが「相場観」ではなく、「通貨間の力関係」を把握することが相場観に繋がる、ということは以前にも記事に書いています。
「通貨間の力関係」を知るためには、各通貨を発行している国家・集合体の背景も押さえておかなければなりません。
そのことを踏まえた上で、今回のスイス・ショックとは何だったのかを再考し、今後のトレードに生かす教訓にしましょう。
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